2016年12月4日日曜日

【第651回】『下町ロケット』(池井戸潤、小学館、2013年)

 面白い。スピードの速さと展開の絶妙さ。これだけ面白い小説を書き続ける著者の着想はどこから来るのだろうか。

 人間ドラマというような括り方をするのではなく、仕事観を考えさせられた。組織を束ねる理由は何か。仕事とは何か。何のために働くのか。

 しかし、仕事というのはとどのつまり、カネじゃないと佃は思う。いや、そういう人も大勢いるかも知れないが、少なくとも佃は違う。
 子供のころアポロ計画に興奮し、ロケットのエンジン部品を作る機会など、人生のうちに二度と巡っては来ないかも知れない。特許使用料など、それに比べたらちっぽけなものではないか。
 「ウチらしいやり方で行きたいんだ」
 佃はいった。「いままで地道にエンジンを作って来ただろ。持っている技術で一生懸命エンジンを作り、お客さんに喜んでもらう。いままでそうやって来たんじゃないか。今度のお客さんは帝国重工だ」(227頁)


 組織としてやるべきこと、自分ができること、自分がやりたいこと。この三つが交わる箇所に、自分の業務やキャリアを位置付けることが重要であると言われる。しかし、往々にして最初のものは当たり前として与えられ、それが二番目の要素に組み合わされば御の字であり、最後の要素はなかなかケアされづらい。黙っていればないがしろにされがちになり、長い期間が過ぎて自分自身のやりたいことがわからなくなる。だからこそ、最後の要素を意識的にリマインドし、そこから自分の業務やキャリアをデザインしようとすることが大事なのではないだろうか。


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