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2019年1月12日土曜日

【第920回】『20歳の自分に受けさせたい文章講義』(古賀史健、星海社、2012年)


 活字離れが進み、出版不況とも言われる。しかし、それは文章を購入して読む機会が減っているだけなのではないか。

 2000年以降、ビジネス場面でのメールのやりとりが普通になった。2000年代中盤からはブログが書かれるようになり、2010年頃からはSNSでの受発信が日常となった。IT革命が叫ばれ始めた頃から、利用するメディアは時代とともに変わりながら、アウトプットする機会は増え続けている。

 では、文章を書くことを私たちは学んできたか。少なくとも私は、小中高大と学んだ記憶はなく、高校3年時に予備校の小論文の講座で学んだことが唯一の機会である。残念ながら、以前の日本における「普通の教育機関」では学生が文章を書くことを授業で扱ってこなかった。そのため、日本のビジネスパーソンが相手に伝わる文章を書くことが不得手であったとしても当たり前なのかもしれない。

 本書では、このような状況を所与のものとして、相手に伝わる文章を書くための考え方やポイントを教えてくれる。

 まず、伝わる文章を書くためには、「「美しい文章」など、目指すべきではない」(74頁)とする。きれいな日本語や美しい文章が書けることは素晴らしいことだが、私たち普通の人間が目指すことは現実的ではないし、決して必要ではない。

 美しい文章ではなく、私たちは、文章の「正しさを意識する」ことで「客観的な目線を意識する」(75頁)べきであると著者は主張する。論理的に正しい文書を目指すためには、自分が書こうとしている内容を充分に把握し、他者が理解し易いように接続詞を用いて論理構成を意識せよというのである。

 その前提の上で、視覚的リズムをつけるために、①句読点の打ち方、②改行のタイミング、③漢字とひらがなのバランス(83頁)の三点を意識することが重要だそうだ。①では一行に一つは句読点を付けること、②については最大5行程度で改行をする、といった歯切れの良いアドバイスがありがたい。

 個人的に反省させられたのが③である。私の文章は漢字が多い。カタカナは意識して減らすようにしているのであるが、漢字をもっと減らそうと思う。但し、ひらがなが多すぎることも読み手にとってストレスになるとのことであるので注意が必要だ。

 もう一つ、興味深かったのは文章のはじめ方である。

 あなたが「プロ野球は最高に面白い!」と主張したいのなら、冒頭は「プロ野球人気の凋落が叫ばれて久しい」と、真逆の一般論で始めなければならない。
 真逆の前提があってこそ、あなたの主張が”転”として機能する。大胆な仮説や疑問を投げかけたように思わせ、読者の興味を引きつけることができるのだ。(197頁)

 起承転結よりも起「転承」結を著者はオススメする。実際、読者が興味を抱きやすい入り方は、引用箇所のプロ野球の例でもわかるように起転承結なのかもしれない。意識して取り組みたいものである。

【第858回】『伝わる・揺さぶる!文章を書く』(山田ズーニー、PHP研究所、2001年)

2018年8月12日日曜日

【第863回】『さあ、才能に目覚めよう(新版)』(トム・ラス、古屋博子訳、日本経済新聞出版社、2017年)

 統計分析を一時的に生業としていた身としては、診断ツールに関する信頼性と妥当性の重要性を意識してしまう。ストレングス・ファインダーを受験する機会があり、十数年前との比較とはいえ、まったく同じなのか、変わるとしたら何か、興味深く受験してみた。

 結果は以下の通りである。

【2004年】
(1)学習欲
(2)最上志向
(3)目標志向
(4)未来志向
(5)内省

【2018年】
(1)学習欲
(2)調和性
(3)内省
(4)収集心
(5)分析思考

 過半数は不変かと予想していたため、信頼性を疑ってみたくも思ったが、結論としては、妥当性が担保されていて、信頼性も一定程度はある、と考える。強みは仕事や生活を重ねることで以前のものを基にしながらも日々更新するものであり、中長期的には変わるものだと考えるからである。このように考えた場合、以前の受験から今回の受験までの生活上の変化やキャリアの変遷をとらえれば、個人的には納得できるものであった。

 では、前回と今回との相違からの気づきについて記してみる。

 まず、みなさんの目を引き、かつ私を知っている方からは「当たり前」とも言われそうな点が、前回と今回とで変わらず堂々たる第一位を連覇した「学習欲」であろう。前回の受験時は、修士に入る前の段階で、日々忙しく勉強に飢えていて学びたい欲求が高かった時期なので納得だが、実は今回は意外な気がしている。知人・友人からは「学習欲がトップに来るのは当たり前」「自分のことをわかっていない」と笑われそうだが、そのようなものなのである。

 ただ、過去を顧みれば、高校生の途中段階で学ぶたのしさを感じてからずっと、学習欲求はたしかに落ちていない。そのインプットする領域が拡がったり、アウトプットすることで自分の血肉にしようと外部に保管するべくブログに著しているのは【収集】の為せるわざであろう。

 修士時代には、先行研究が途中からたのしくなってしまい、ひたすら論文を渉猟して自身の研究領域を同定するのに自然と時間をかけた。(おかげで期日までに論文を書き終えられるかヒヤヒヤした…)

 読書については、2005年頃から脳科学やデザイン、2010年頃からは小説(明治・大正期)・古典(特に中国)・宗教学、2015年頃からは現代小説・歴史といったように分野を拡げたのは【収集】と【学習欲】の合わせ技によるものだろう。

 次に興味深いのは二番目にランクした【調和性】である。

 前回受験した際、自分の書籍には、この【調和性】には×の印がついており、おそらく自分には強みとして存在しないものと自身で考えていたようである。当時はコンサル営業をしており、顧客との関係が主な業務であり、チーム内でも上司・先輩に教えていただくジュニアな状態だったから発揮されていなかったのであろう。

 その後、事業会社に移り、プロマネとしてミーティングで合意を得て前に進めること、チームメンバーの納得を得ながらチームとして成果を出すこと、HRBPとしてステイクホルダー間の利害を調整してファシリテーションすること、といった経験を経て、それぞれの場面での難局を乗り切る礎としてこの強みが顕在化したのではないか。研修時のファシリテーションを想起しても【調和性】があるのは納得的であり、悪く言えば、自身の弱みを生み出している強みでもある。

 三番目の驚きは、あれほど上位にいた「志向」系が軒並みベスト5から落ちている点で
ある。若い時分には理想家肌で向こう見ずな側面があり、それが三つの「志向」を強みにしていたのであろう。

 反対に、【分析思考】が前回入っていなかったことには驚きである。この十数年の間に、人事内での多様な職種や職場環境に挑戦しアジャストするうえで、論理性ほど役に立った汎用的なスキルもなかった。自身のそれまでの文脈から一歩引いた仕事が求められる中で、論理性がより強化されたのかもしれない。

【第172回】『「働く居場所」の作り方』(花田光世、日本経済新聞出版社、2013年)
【第252回】『組織内専門人材のキャリアと学習ー組織を越境する新しい人材像ー』(石山恒貴、日本生産性本部、2013年)
【第441回】改めて、キャリアについて考える。
【第538回】『ソース』(マイク・マクマナス、ヒューイ陽子訳、ヴォイス、1999年)

2017年4月16日日曜日

【第698回】『Excel 最強の教科書[完全版]』(藤井直弥・大山啓介、SBクリエイティブ、2017年)

 正直に言えば、ハウツー本というものをこれまで軽視してきた。表面的なスキルやテクニックを身につけたところで、それは一過性のものに過ぎず、環境変化によって陳腐化してしまう。それよりも、もっと歯ごたえのあるものを読み進めようと格闘したり、美しい日本語や物語を読むことで心を涵養したい。こうした気持ちは今でも基本的には変わらない。

 しかし、である。ハウツー本の効用というものもあるのではないか。そうした類の書籍を敬遠しようとする気持ちに、自分自身の小さなプライドが見え隠れしているのであれば、読むべきなのではないか、と今回のケースでは思い至ったのである。

 これまで見よう見まねでExcelには接してきた。最初に焦ったのは大学院に入る少し前の時分だ。白状すれば、2007年当時でvlookupを使いこなせなかったのであるが、私の研究領域の場合、質問紙調査の基礎的な分析としてvlookupが当たり前のスキルとして求められた。その苦い経験からExcelには苦手意識を持ってきたが、困った時は「Google先生」に聴くという一択でなんとかやりくりしてきた、と思っていた。

 それは思っていたというよりも思い込ませてきたということだったのであろう。冷静に考えれば、何かに困った時に「Google先生」に聴くという発想では、何かを提示したいために分析を行うという正当なプロセスには至らない。プロセスにおける引き出しをいくつか持っていなければ、思考は窮屈になり、自分自身で制約をかけてしまう。だからこそ、自分自身を邪魔していた変なプライドを取り去ろうと思ったのである。


 前置きが長くなったが、本書はExcelの入門書である。私のように、見よう見まねで何とか対応してきた人間にとって、ちょうど良い復習であるとともに、新しい学びを得られる素晴らしいテクストである。もちろん、全てを覚えたということは毛頭ない。今後、オフィスに置いて辞書代わりに参照していこうと思える書だ。

2017年4月15日土曜日

【第697回】『新版 人事の定量分析』(林明文編著、中央経済社、2016年)

 気になってはいたが、ついつい読みそびれてしまっていた本。書店でパラパラと読んで買おうかどうか迷い、他の本を優先してしまって買っていなかった本。そんな書籍が版を重ねて、さらには新版になったと聞いて、ようやく踏ん切りがついた。

 人事という職務の領域にもAIの影響が出てくることは容易に想像できる。楽観的に傍観しているわけではないが、人工知能に任せるべきものは任せるべきであろうし、機械が得な領域でまともに戦うことは意味がないだろう。


 人間が出せる価値は一体何になるのかを現時点で把握することは困難である。しかし、AIと共存する近い将来に向けて、いかにデータを揃え、分析するか、といったAIが活躍しそうな領域を理解することが大事なのではないか。このように考えると、人事のデータ分析の範囲を理解し、何を分析することでどのような価値があるのかが事例とともに簡潔に記されている本書の意義は大きい。