論語の翻訳書といえば金谷治氏の一択だと思っていたが、本書はもう一冊家に置きたくなる一冊である。訳および著者の踏み込んだ解釈も素晴らしい。しかし、もっとも注目すべきは、巻末に「手がかり索引」があり、ある漢字がどこで使われているかを検索することができる点ではないだろうか。
この機能によって、気になる言葉を足掛かりにどこでどのような意味合いで用いられているかを比較・検討することができる。これはぜひ持っておきたいと思える要素である。
今回は、一通り読んだ後に、「学」という言葉に注目して辞書のように読んでみた。
子曰く、君子重からざれば、則ち威あらず。学びても則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ。過ちては則ち改むるに憚ること勿れ。(学而第一・八)
「学びても則ち固ならず。忠信を主とし」の部分を「学問をしても堅固ではない。このように質の充実つまりはまごころを核とすることだ」(24頁)と訳しているところが考えさせられる。ただ何かを学習するのではなく、まごころを大事にして他者にも当たるということが大事なのであろう。
子曰く、君子は博く文を学び、之を約するに礼を以てせば、亦以て畔かざる可きか(雍也第六・二七)
著者は君子を教養人として一貫して訳している。その上で「まず広く知識を学習し、次いでそれらを帰納してゆく」(140頁)という順番を重視し、その際に「礼に基づく」(140頁)ならば間違わないとしている。何かを学ぶ時に噛み締めたい至言である。
【第92回】『論語』(金谷治訳注、岩波書店、1963年)
【第340回】『ドラッカーと論語』(安冨歩、東洋経済新報社、2014年)
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