フッサールの思想を現代において改めて光を当てたと評価される本作。書かれている内容は決して平易ではない。論旨が取りづらい箇所も多い。しかし、考えが深まるあるいは深まりそうな示唆に富んだ記述が随所にあり、難しいのに癖になりそうな読後感のある本である。
決定的に重要なのはエポケーの目的を誤解しないことである。エポケーを行うのは、実在を否定し、疑い、無視し、放棄し、研究から排除するためではなく、単に実在に対するある一定の独断的態度を遮断あるいは中立化するため、すなわち現象学的に与えられたものーー現出するがままの対象ーーに一層詳しく直接的に焦点を当てることができるためなのである。(69頁)
フッサールといえばエポケーである、と私は理解している。判断停止とも訳されるこの概念について、フッサールの認識論が現れていると捉えられるのではないだろうか。
エポケーは、注意を世界内的対象から背けさせるのではなく、世界内的対象を新しい光の下で、すなわち意識に対する対象の現出あるいは顕現において構成された相関体として吟味することを許すのである。(77頁)
エポケーの可能性は対象をくっきりと理解することにある。ありのままをそのまま理解する、ということであろうか。
【第901回】『組織開発の探究』(中原淳・中村和彦、ダイヤモンド社、2018年)
【第933回】『超解読!はじめてのフッサール『現象学の理念』』(竹田青嗣、講談社、2012年)
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