三部作の真ん中の巻というのはとらえどころが難しい。不安が募る展開になったとしても、最終巻があるのだからそのまま結末へと至ることにはならない。反対に、ポジティヴになってもその後の揺れ戻しが想定される。
説明されないとわからないのであれば、説明されてもわからないのだ。(213頁)
至言である。説明が必要な事象というのは、複雑すぎるのである。シンプルであるということは、それだけで価値があるものであり、いかにシンプルにするかが重要なのである。
これからこの世界で生きていくのだ、と天吾は目を閉じて思った。それがどのような成り立ちを持つ世界なのか、どのような原理のもとに動いているのか、彼にはまだわからない。そこでこれから何が起ころうとしているのか、予測もつかない。しかしそれでもいい。怯える必要はない。たとえ何が待ち受けていようと、彼はこの月の二つある世界を生き延び、歩むべき道を見いだしていくだろう。この温もりを忘れさえしなければ、この心を失いさえしなければ。(500~501頁)
読ませる展開でありながらも、重たい中巻の中で、最後の最後に明るさを感じさせる。
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