BOOK2の終わりが嫌な予感を残すものだったので不安を抱きながら読み進めることとなったが、概ねハッピーエンドで安心した。著者の小説の中では、最もエキサイティングに読み進め、かつ期待を持ちながら読めたように思う。
父親は死ぬことに決めたのだ。あるいはこれ以上生きようという意思を放棄した。安達クミの表現を借りるなら「一枚の木の葉」として、意識の明かりを消し、すべての感覚の扉を閉ざして、季節の刻み目の到来を待ったのだ。(428頁)
ある人物の死を描写したシーンである。自死ではなく、死を選べるというのは、それはそれで望ましいものなのではとも思えてしまう。もちろん、現実における死とは、そのようなものではないのであろうが。
あなたのお父さんは、何か秘密を抱えてあっち側に行っちゃったのかもしれない。そのことであなたは少し混乱しているみたいに見える。その気持ちはわからないでもない。でもね、天吾くんは暗い入口をこれ以上のぞき込まない方がいい。そういうのは猫たちにまかせておけばいい。そんなことをしたってあなたはどこにも行けない。それよりも先のことを考えた方がいい(487頁)
死によって遺された者は、程度の差はあれ、自責の念に苛まれるのではないだろうか。しかし、死者はそうしたものを必ずしも望んでいない。だからこそ、後を振り返るのはほどほどにして、死者がもはや存在しない将来に目を向けることが必要なのであろう。
適度な野心は人を成長させる(518頁)
話の筋とは全く関係ない箇所だが、印象に残った部分である。「適度な」という部分が考えさせられる。
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