高橋尚子や有森裕子を指導し、オリンピックで三大会にわたってメダル獲得を支援したコーチとして有名な著者。その著者が、私たち一般の人々に向けてマラソンに臨む準備や日頃の練習について平易に解説してくれている。
優しさに溢れたような、著者の人柄のあたたかさが滲み出る文体が、マラソン初心者を動機づけてくれる一冊だ。既刊の『マラソンは毎日走っても完走できない』『30キロ過ぎで一番速く走るマラソン』の要点を絞って編集してくれているのも、ありがたい。
図や絵を用いながら噛み砕いて説明がなされ、また実際のレースの何週間前にどのような練習をすれば良いかについて事例を交えながら解説してくれている。こうした具体的かつ実践的な内容は明快である。
こうした実践的なアドバイスの背景にある考え方が以下に端的に要約されている。
では、具体的に「体」のどこに負荷をかければいいのでしょう? マラソンの練習で負荷をかける場所は2カ所です。ひとつは、脚ーー42・195キロを(めざしたタイムで)走りきれるように負荷をかける。もうひとつは心肺ーー速いスピードで走っても耐えられるように負荷をかけます。(3~4頁)
ジョギングが日常的でマラソンにも複数回出ているベテランの方には当たり前のことなのかもしれないが、初心者にとってはポイントが明確になりわかりやすい。具体的なアドバイスや事例を考える際にも、このポイントを意識して、自身の練習に取り入れたいと思った。
【第165回】『走ることについて語るときに僕の語ること』 (村上春樹、文藝春秋社、2007年)
【第782回】『職業としての小説家』(村上春樹、スイッチ・パブリッシング、2015年)
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