クランボルツ自体の著作は決して読みづらいものではない。しかし、旧来のジョブマッチング的なキャリア論と異なるために理解が難しく、また誤解しやすい部分もあるようだ。本書は、例示が豊富でかつ考え方のエッセンスに焦点を絞って解説しているため入門書として最適だ。
クランボルツは、提唱するPlanned Happenstance Theoryのポイントを、好奇心、持続性、柔軟性、楽観性、冒険心の五つにまとめている。この五つを順序立てて、好奇心(面白い)→冒険(やってみよう)→楽観(大丈夫)→持続(納得いくまで)→柔軟(テングにならない)という流れに仕立て直している点(46頁)は興味深い。
では、タイトルにも謳われている「夢のあきらめ方」とは何か。
「あきらめる」をgive upとして否定的に捉えるとクランボルツの理論を誤解することにつながる。クランボルツのいう「あきらめる」は、よく言われるように、仏教用語の「明らかに見極める」として捉えるべきであろう。
この表現をさらに咀嚼して、夢はしっかりと代謝するべきであると述べ、その要諦を、上述した五つのポイントと絡めて以下の三つにまとめている。
①まず踏み出すこと。踏み出すというのは、冒険心や好奇心や楽観性が必要です。
②そして一から始める。これは柔軟性が必要です。
③そして、続けること。これは持続性ですね。あっちこっちつまみ食いしたら、夢は葬れません。(92~93頁)
この箇所は、クランボルツの理論を理解していると思っている方々にも響くのではないだろうか。なかなか言い得て妙なアナロジーであり、考えさせられるものである。
【第441回】改めて、キャリアについて考える。
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