2018年9月24日月曜日

【第887回】『村上海賊の娘(二)』(和田竜、新潮社、2016年)


 一巻ではコメディに近い作品かと思っていたが、二巻に入ると、大坂本願寺と織田軍との手に汗握る戦闘へと場面が展開される。闘いの中で描かれるのは、闘いの前日までは酒宴などで明るく快活な描写の多かった海賊の頭領たちのリーダーシップである。

 同じ泉州の者が窮地に陥れば、形振り構わず加勢に向かうのが、触頭たる者の第一の心得である。この心意気があってこそ、目下の者は頼もしく思い、守り立ててもくれるのだ。(226頁)

 泉州地域における覇権争いをしている家同士であっても、同じ織田軍の中で何れかが劣勢に立つと自ずとサポートをし合っている。飾らない自然体でリーダーシップを発揮していることが、部下たちのフォロワーシップを強化している様がきれいに描かれている。

 酒宴で泉州侍を思いのままに引き回し、木津砦では巨大な銛で我を救い、一万余の軍勢に敢然と立ち向かっては、同じ泉州侍の卑劣なやり口をも笑い飛ばす。
 そんな泉州侍の粋を集めたかのような男が自分を認めた。泉州侍の全部がそっぽを向こうとも、この大男だけは自分を知っている。(267頁)

 さらには頭領同士が、最初は反目し合っていたにも関わらず、闘いの中でお互いを認め合う様もまたいい。リーダーはリーダーを知り、お互いのリーダーシップの発揮に良い影響を与え合うものなのであろう。

【第384回】『国盗り物語(一)』(司馬遼太郎、新潮社、1971年)
【第385回】『国盗り物語(二)』(司馬遼太郎、新潮社、1971年)
【第386回】『国盗り物語(三)』(司馬遼太郎、新潮社、1971年)
【第387回】『国盗り物語(四)』(司馬遼太郎、新潮社、1971年)

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