2019年3月3日日曜日

【第935回】『陋巷に在り 2 呪の巻』(酒見賢一、新潮社、1997年)


 顔回ってかっこいいと単純に思ってしまう。もちろん、フィクションであることは百も承知。しかしながら、こんご論語や論語関連の本を読むときに、顔回に抱く印象が変わることはまず間違いないだろう。

 かっこいい顔回の活躍に魅了されながらも、孔子や孔子に私淑する先輩とのやりとりから、彼が礼を重んじて行動する姿に論語の世界観が現れている。

 顔回は太長老に聞いたことがある。八佾の畏力の根源はじつは八という数字にある。すなわち「易」の八卦の神秘力と説明された。(186頁)

 孔子と易経とは少し遠い関係性にあると通常では言われている。異教との争いに巻き込まれる顔回が、八佾を表象する六十四人の鬼との闘いでは易における八佾の位置付けが解説される。こうした少しの解説が物語にアクセントを与えていて面白い。

【第934回】『陋巷に在り 1 儒の巻』(酒見賢一、新潮社、1996年)

0 件のコメント:

コメントを投稿