半死の状態でかろうじて救い出された妤を救うべく尼丘に戻った五六たち。妤に医療を施すべく、異色の名医・医鶃が登場する。この医鶃のキャラが甚だ濃く、医鶃と子蓉との妤を介した闘いが凄まじく、一気に読ませる。
相手の心情を透視できる医鶃を以ってしても、最初は顔回という人物を評価することができなかったようだ。しかしながら、二言三言交わす過程でその類まれな学習欲求を通じてその可能性を見出す。
顔回を前にすると自分の考えや知識、何を学べばよいかなどを、うずうずと伝えたくなり、顔回が怠けていたり間違っていたりすると、そんなことは滅多にないことながら、必要以上に叱りつけたくなる。しかも教え甲斐のあることには顔回はそれらを渇いた砂のように吸収して、独りで実践にまで漕ぎ着けてしまうのである。これほど教授する心を動かす男も稀であろう。(210頁)
学ぶ者として、かくありたいものである。
【第934回】『陋巷に在り 1 儒の巻』(酒見賢一、新潮社、1996年)
【第935回】『陋巷に在り 2 呪の巻』(酒見賢一、新潮社、1997年)
【第936回】『陋巷に在り 3 媚の巻』(酒見賢一、新潮社、1998年)
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