2011年7月17日日曜日

【第34回】『教育研修ファシリテーター』(堀公俊+加留部貴行著、日本経済新聞社、2010年)

 職業柄、企業における教育研修をデザインし実行することが多い。しかし、そのポイントを言語化して他者に伝えるということは難しく、「自分でできる」と「他者ができるようにする」の間には大きなギャップがある。

 前職で研修スキルを強化するための研修も仕事にしていたわけで、誤解がないように言い訳がましく記すが、ある程度は伝えられると思うが、本当に相手が自信を持って研修できる、というレベルまで到達してもらうことは難しいと感じていた。

 こうした言語化することの難しいテーマに対して、正面から意欲的に立ち向かっているのが本書である。かゆいところに手が届くような言い回しや、図を用いての整理は分かり易い。特に、三つの主要な学習モデル(学習転移モデル、経験学習モデル、批判的学習モデル)をもとにして、集合研修の三つのスタイル(知識伝達型、問題解決型、省察型)を整理している点は、個人的に腑に落ちた。

 また、具体的なレベルにまで落とし込まれているのが実務者としてはうれしいところである。特に「話し合い」を展開させる手法の部分に感銘をおぼえた。私自身は本書でいうところの拡大型と呼ばれる、個人で考える⇒ペアで話し合う⇒グループで話し合う⇒全体で共有する、という基本の流ればかりを重視していたことに気づかされた。

 しかし、本書によればそれ以外にも縮小型(全体討議⇒グループ討議⇒個人検討)、内省型(個人検討⇒グループ/全体討議⇒個人再検討)、共有型(全体討議⇒グループ/個人検討⇒全体討議)、創発型(グループ討議⇒全体/個人検討⇒グループ討議)という合計5つのものが取り上げられている。全体像を把握し、それぞれの特徴を比較検討することで、研修の流れに応じてどれが適しているかを判断することができる。

 このように、自身の教育研修の考え方や手法を内省して気づきを与えてくれる、という意味で本書は活用できる。もちろん、教育研修にはじめた携わる方が読んで、一通りの基本型を理解するという読み方もあるだろう。



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