2012年5月13日日曜日

【第83回】【番外編】転機に響いた7冊


昨年、「2006年のベスト10冊」を何人かの方にお送りしたところ、ある方から、決しててらうことのない表現で「自分は200冊以上の本を読んだ」とのご返信をいただきました。私が2006年に読破した数は100冊強です。このような単純な比較をし終えると、私も200をターゲットにせねば、という思いに強くとらわれました。私よりも優秀で尊敬してやまない方にこれ以上離されないためにはせめて同じくらいの数は読まなければ、と。

結果、2007年には205冊を読み終え、無事に目標を達成できました。どんなささやかなことであれ、自分で目標を設定して自分の力で達成することは清々しいものです。

さて、2007年も年末を迎える頃、今年もベスト10冊を選ぼう、と思い立ちました。当初は、2006年の倍近い本の中からたった十冊を選び出すのは難儀になるのではと感じていました。実際、感銘を受ける本をたくさん読みましたし。しかし、懸念は杞憂に終わりました。むしろ数が増したことで、突き抜けて素晴らしく大事な方々に推奨したい本が出てきました。これまで導入してきた「ベスト10」というような客観的な基準を設定して選び出すというよりは、主観が反応して自ずと出てくるというイメージでしょうか。

そこで今年は7冊の本を皆さまにご紹介いたします。それぞれに素晴らしいため、優劣や好悪の順番は付けられませんでした(※Ⅱの丸内の数字は主観的な順番を表すものではなく、読んだ時期が早いものからという客観的な順番を振っています)。

①『自分の小さな「箱」から脱出する方法』
(アービンジャー・インスティチュート著/金森重樹監修/富永星訳、大和書房、2006年)
【コメント】
・ジャンルとしては対人コミュニケーション。
・相手が悪いと考えず、また自分が悪いとも考えない、という甘え対ストイックというありがちな二分法を脱却した枠組みを提唱している点がすごい。




②『不動心』(松井秀喜、新潮社、2007年)
【コメント】
・飄々とした松井の言動の背景にある、深いものの見方が惜しみなく表れていて感銘を受ける。
・イチローの思考・行動・意識と対比しながら読むと大変面白い(イチローに対するある種の“ファッショ”を相対化できる)。




③『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』
(エドワード・L・デシ+リチャード・フラスト/桜井茂男訳、新曜社、1999年)
【コメント】
・動機付け/モティベーションに興味がある人には特にお勧めである。
・(給与・出世といった外的キャリアに興味がない私をしても)ふとしたときに外発的動機付けに強く意識が向かっていることが分かり、自分を動機付けることについて深く考えさせられた。




④『フロー体験 喜びの現象学』
(M.チクセントミハイ著/今村浩明訳、世界思想社、1996年)
【コメント】
・ジャンルは心理学。
・「フロー=何かに没頭すること」という単純な理解で済ませていたことがいかにもったいない理解だったかが分かり、大きな気づきを得た。




⑤『企業内人材育成入門』(中原淳編著、ダイヤモンド社、2006年)
【コメント】
・特に企業で研修/人材開発・人事に携わる人にお勧めである。
・研修準備や論文執筆に使えるので、手元に置いて辞書のように使用している。




⑥『リーダーシップの旅 見えないものを見る』(野田智義・金井壽宏、光文社、2007年)
【コメント】
・リーダーシップ論の本である。
・これまで読んだ全てのリーダーシップの本の中で最もインパクトがあり、特に「リーダーになりたいからなるのではなく、やるべきことがあるからリーダーになる」という部分が目から鱗であった。




⑦『MAJOR』(満田拓也、小学館、1994年~)
【コメント】
・野球漫画だが、野球を知らない人でも容易に読める。
・ストイックに自分で頑張るだけではなく、仲間と一緒に頑張ることの素晴らしさを改めて感じた。
・特に気に入っているのは、「自分には才能がないから」という理由で野球部を辞めようとする同級生に対して発する主人公の以下の台詞。「本当に才能がないと言い切れるだけの努力はしたのか?他人にやらされてた練習を努力とは言わねえだろ。好きな野球して将来飯食おうなんて図々しい特権、与えられた宿題こなした程度で手に入るわけねえじゃん」

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