昨年、一昨年のエントリーでも書いたが、Numberの日本シリーズ特集号は毎年欠かさずに買い求めている。日本シリーズの覇者は、2011年のソフトバンク(Number792「ホークス 最強の証明。」(文藝春秋社、2011年))、2012年の巨人(Number816「日本最強のベストナイン」(講談社、2012年))と続いて、今年は楽天だ。
まずは、楽天のエース田中将大投手の言葉から。
「最後までマウンドに立ってやろうという気持ちはありました。投げミスが多く、こういう大事なところで出てしまったのは、自分の力のなさです。今シーズン、もっときつい時があったし、コンディションはいつもと変わらなかった。最後は球場がどうやったら盛り上がるか考えました。三振をとれたのはよかった。明日は自分のできることをやりたい」(21頁)
シーズン中に24勝0敗という金字塔を立てた彼が、ポストシーズンとは言えども唯一負けた試合の後に残したコメントである。記録が途絶えたことに対する悔しさではなく、客観的に試合を振り返ることのできる冷静さ。これこそが田中投手の類い稀な才能の一つなのではないだろうか。さらには、160球の熱投の後にも関わらず、翌日の第七戦を見据えた発言をしている点にも脱帽だ。
次に、敗軍の将となった巨人の原辰徳監督の言葉について述べたい。彼は『真の強い組織とは』という題目で今夏のAKB48のドームツアーに文章を寄せたそうだ。その中で、「集団を支える個の技術」「リーダーの非情さ」「”孤独”の解消」の三つのその条件として挙げたとされている(34頁)。
リーダーシップというような包括的な概念を用いずに、敢えてリーダーの「非情さ」に限定しているところが面白い。選手起用の権限のある監督としての自分自身に試合の勝敗の責任を負わせるような厳しさが垣間見える。本誌での論考では、原監督が非情になりきれなかったことが敗因の一つとして提示されているが、果たしてどうか。一手に勝敗の責任を負おうとする彼は「真の強い組織」にふさわしいリーダーの一人だろう。
最後に、日本シリーズとは関係はないが、ジョゼ・モウリーニョの言葉を取り上げたい。
「毎試合前、ホテルの部屋で2分かけて読んでいる。聖書をランダムに開いて、目に留まった章をたどる。そこには救いや希望がある。私はそれで少しだけ前向きになることができる。それは心に平穏を与えてくれるメッセージのようなものなんだ。」(95頁)
インタビュアーの「聖書は読みますか?」という質問への回答である。大言壮語をして選手を奮い立たせ、自身へプレッシャーをかけ続ける彼が、試合に臨む前に聖書を読んでいるという事実はいささか意外だ。しかし、自分を厳しく律する姿勢を持ちながら、同時に何かに自分を委ねる一瞬を持つこと。これが強いリーダーシップを発揮する上での礎の一つになっているのかもしれない。
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