2018年3月26日月曜日

【第822回】Number948「僕らは本田圭佑を待っている。」(文藝春秋、2018年)


 直近の日本代表に久しぶりに呼ばれて再び注目を浴びているサッカー日本代表の本田圭佑選手を特集した本号。日本代表に初めて呼ばれた頃から、歯に衣着せぬ言動で良くも悪くも注目されてきた存在であり、今年の6月にロシアに行けるのかどうかは非常に興味深い。

 個人的には、有言実行のタイプには魅力を感じ、彼の進路に対する意思決定や大きな試合後の言動には注目してきた。そうした私のような方にとっては、「さすがはnumberだ」と納得する、一読に値する特集であろう。

 最初に彼が物議を醸したのは2009年9月のオランダ戦で、絶対的なフリーキックのキッカーであった中村俊輔選手に対して自分が蹴ると直訴したケースであろう。その試合の一週間後に、受けたインタビューで彼は謙虚という言葉に対する考え方を以下のように語っている。

 僕の中での謙虚とは、強い志を持って、高い目標に対して真剣に、客観的に自分を観察しながら取り組んでいくことだと思っています。誰かに褒められたときに『そんなことないですよ』と言うのが、謙虚だとは思わない。それはただ、自分を制限しているだけだというか、逃げ道をつくっているだけだと思うんです。そうじゃなくて、単純に目標を公言して、それに対して本気でどう取り組んでいくか。現実はそんなに甘くない。でも、その目標に対して自分自身をしっかり見つめながら成長しようとするのが、謙虚な姿勢なんだと思います(25頁)

 日本人の多くは、絶対的なFKのキッカーで年長者の存在に対してフリーキックを譲って事を荒立てないことを「謙虚」と捉えてしまう。しかし、本田選手の捉え方は全く異なるし、単に「謙虚」という言葉を否定的に捉えているのではなく、自身に対して厳しく律する考えに基づいていることに注目したい。

 次に、兄によって語られた記事もまた必読である。実の兄が語る人物像は、全てを読んでいただきたい内容であるが、肉親の語る温かくかつ熱い人柄が表れる以下の箇所が特に気になった。

 圭佑は今、負けても泣かないですよね。子供の頃は泣くことでしか悔しさを発散できなかったけど、今は泣く代わりに、胸の中でもっと強くなるために次どうしたろう、と考えているんやと思います(57頁)

【第815回】Number947「平昌五輪 17日間の神話。」(文藝春秋、2018年)
【第91回】Number807「EURO2012 FINAL」
【第417回】『察知力』(中村俊輔、幻冬舎、2008年)
【第413回】『In His Times 中田英寿という時代』(増島みどり、光文社、2007年)
【第45回】『心を整える。』(長谷部誠、幻冬社、2011年)

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