2018年11月3日土曜日

【第899回】『伴走者』(浅生鴨、講談社、2018年)


 伴走者とは「伴に走る者」である。パラスポーツに焦点を当てた本作は、全盲の方が競技を行うマラソンとスキーの二編から成る。

 「伴走者」が行うことは、パラアスリートの目の替わりをすることであり、それ以上でも以下でもない。伴に走り、伴に共通の目的に向かう、パートナーなのである。良かれと思った行動であっても、そこから逸脱したものは「ありがた迷惑」であり、相手を尊重しない行動と受け取られる。

 伴走者。それは誰かを助けるのではなく、その誰かと共にあろうとする者、互いを信じ、世界を共にしようと願う者だ。(246頁)

 相手が何ができて、何ができないのかを理解しようとし、できることを伸ばすことを支援し、できないことを補おうと支援すること。そうした意識と行為をお互いに依存し合いながらすることが信頼関係と呼ぶものなのではないか。

 では、「ありがた迷惑」にならないように支援するためにはどうすればいいのか。

 心理学者の大家であるエドガー・シャインは『人を助けるとはどういうことか』で、支援関係の原則の一つ目として「与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。」(235頁)と述べている。相互にそうした支援を行い合えることが、伴走者のみならず、あらゆる人間関係にとって効果的な支援となるのであろう。

 支援や信頼について考えさせられる一冊である。

【第782回】『職業としての小説家』(村上春樹、スイッチ・パブリッシング、2015年)
【第165回】『走ることについて語るときに僕の語ること』 (村上春樹、文藝春秋社、2007年)

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