日本を代表するフロイト心理学とユング心理学の碩学二人による贅沢な対談。ど素人としては、フロイトとユングとの関係を反映して論敵のような関係なのかと思っていたが、お互いのリスペクトが見られる噛み合った対談となっている。
治療者への転移と、そこで回想されてくる患者のフロイト的な発達の中に出てくるものが、うまく一致するように治療が進んでいくことが、治療技術としては、一番重要な問題だと思います。そのあたりがフロイトとユングの治療のプロセスとか技法の違いの一つになるんでしょうね。(115頁)
小此木によるフロイトとユングの違いに関する指摘。フロイトは人間の発達に着目し、それが発達心理学へとつながる。続けて小此木は次のように指摘する。
フロイディアンの図式で現在、一番一般化しているのは、エリクソンの八つの年代論、人生の周期ですね。(149頁)
E・H・エリクソンはフロイトの娘であるアンナ・フロイトの弟子であり、ライフサイクル理論へと受け継がれた。こうした学問の系譜というものも調べてみると面白いものである。
【第931回】『新版 精神分析入門(上)』(フロイト、安田徳太郎・安田一郎訳、角川書店、2012年)
【第932回】『新版 精神分析入門(下)』(フロイト、安田徳太郎・安田一郎訳、角川書店、2012年)
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