高校時代に野球部に所属していたわけではない。しかし、松坂大輔と同じ学年である私も松坂世代の一人だと自負している。それほど、松坂大輔という平成の怪物の存在は大きく、その影響範囲は野球界にとどまらないようだ。
松坂にしてみれば、とくに自分を追い込んでいるわけでも、人に隠れて努力をしているわけでもない。自分の体の状態をしっかりわかっていて、明日の試合で良いパフォーマンスをするためにはここでちょっと走っておいたほうがいいと思った。そう思ったら、みんなが楽しく遊んでいようと、お構いなしに走りに行く。松坂は高校生の段階で、すでにプロとしての行き方を実践していた。(278頁)
常日頃は周りと合わせて協調的に振る舞うが、自分が信じた軸に抵触する場合は自分自身のやり方を貫く。これは当たり前といえば当たり前だが、高校生の頃からできるかと言われると難しい。そこまで早い段階で己を確立することが難解だからであろう。当たり前のように高校生の段階でそれができることが松坂大輔という人物の凄みなのだろう。
松坂とは、直接触れ合った者を狂わせ、触れ合うことが出来なかった者にエネルギーを与えるという不思議な存在だった。(423頁)
人は圧倒的な才能に魅せられるものだと思う。遠くにいればそこからポジティヴな影響を受ける一方、近すぎると天才と比較して自分自身の至らなさを痛感し、どこか諦観してしまう、ということなのかもしれない。
【第449回】『イチロー・インタヴューズ』(石田雄太、文藝春秋、2010年)
【第411回】『屈辱と歓喜と真実と』(石田雄太、ぴあ、2007年)
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