2019年5月4日土曜日

【第952回】『初学者のための現象学』(ダン・ザハヴィ、中村拓也訳、晃洋書房、2015年)


 フッサールを嚆矢とする現象学について初学者のために書かれた本書。「初学者のための」という言葉に惹かれて読み始めたもののなかなかにして難しい。フッサールの現象学について学びを深めることが目的だったので全体を理解することは断念し、フッサールの部分のみに集中。

 現象学は、対象のさまざまな現出の仕方の哲学的分析として把握することができ、それに関連して、対象にあるがままに自己を示すことを可能にする理解構造の反省的研究として把握することができる。(4頁)

 ある対象をそのままのものとして示すことができることが現象学という学問の射程であるとしている。

 エポケーは素朴な形而上学的態度の中止を表す名称であり、したがって哲学への入り口とみなすことができるが(中略)、その一方で還元は主観性と世界の連関の主題化を表す名称である(中略)。したがって、エポケーも還元も、われわれを自然的独断論から解放し、われわれの固有の構成的(認知的かつ意味付与的)関与をわれわれに意識させる超越論的反省の契機とみなすことができる。(14~15頁)

 カッコに括ることも、自身の主観を外界に位置付けることも、独断から離れて行うことをフッサールは主張したということであろう。科学による解釈を宗教のように金科玉条として扱うことは独断論であり、そうした科学偏重主義への警鐘を鳴らしていると解釈できるのではないだろうか。

 現象学の功績は、人間を科学的に記述する試みにあるのではなく、むしろ科学性それ自体を、科学的合理性や認識する主観の志向性の形式の詳細な分析によって理解できるようにすることにある。したがって、本質的課題は、科学を営むときに、われわれがとる理論的態度は、われわれの世界内存在からどのように生起するのか、どのように理論的態度は世界内存在に影響し、世界内存在を変更するのかという問いの究明なのである。(29頁)

【第950回】『新装版 フッサールの現象学』(ダン・ザハヴィ、工藤和男・中村拓也訳、晃洋書房、2017年)
【第951回】『なぜ世界は存在しないのか』(マルクス・ガブリエル、清水一浩訳、講談社、2018年)
【第933回】『超解読!はじめてのフッサール『現象学の理念』』(竹田青嗣、講談社、2012年)

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