この展開はすごい。下巻の中盤あたりからラストに向けた畳み掛けが見事。上巻から散りばめられた様々なエピソードが、これがそれに繋がるのかと感嘆するようにこれでもかと結びついていく。組織とは何か、正義とは何か、報道による知る権利とは何なのか。人間ドラマを通じて様々なことを考えさせられる。
<ひと月で慣れる。ふた月で染まる。人事は例外なくそうだ>(128頁)
「人事」という機能に対する皮肉な台詞もそうだよなと思わさせられる。
事件は何度でも人を試す。暗がりを、三上は一歩一歩踏み締めて歩いた。(396頁)
ネタバレにならないように書くと、事件が新たな事件を生み出す。そこには様々な感情が綯い交ぜになり、誰が何の権利で誰を裁くのかという究極の難問が生じる。そもそも、人は人を裁けるのだろうか。裁けるとしたら、その根拠は何なのだろうか。
【第993回】『64(上)』(横山秀夫、文藝春秋社、2015年)
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