2015年4月26日日曜日

【第435回】『経営学入門(下)』(榊原清則、日本経済新聞出版社、2002年)

 上巻で組織にまつわる理論の整理が為された上で、下巻では企業実務における個別具体的なテーマが取り上げられている。以下では、とりわけ心に留めておきたいと考えた二点について記していく。

 もともとマトリックス組織というのは、組織運営に多大の費用を要し、また手続きが煩雑な「重たい」組織形態です。マトリックス組織は「攻め」の組織であって、「守り」には向いていないといわれています。その意味は、成長段階には適していても、事業環境が悪化しているときには、必ずしも適当な組織ではないということです。グローバル規模で組織の難しさが顕在化し、いわば「マトリックスの呪縛」に苦しめられている多国籍企業は決して少なくありません。(58頁)

 第一に取りあげたのはマトリックス組織についてである。成長段階にない場合においてマトリックス組織が持つ「重たい」組織という特性がマイナスの作用をもたらす、というようにも解釈できるだろう。つまり、非成長段階においては、二つのレポートラインがそれぞれにその存在意義を主張するために課業を作り出すということではないか。そうすることによって不要な課業が増え、たとえば機能優先の施策をそれぞれの機能部門が出すことで、地域内での整合性が取れなくなり、成長がさらに鈍化する。こういった事態に陥るリスクをマトリックス組織は内包していることに、私たちは自覚的であるべきであろう。

 日本企業においては、狭い意味の技術力が不十分だというより、多分それ以上に、技術を武器として競争市場のなかで成果を獲得していく「技術経営」に不十分さが目立つのです。戦略・組織を中心とする経営力の不足が決定的です。(162頁)

 日本企業の海外でのプレゼンスが下がった背景の一つとして、日本企業の有する技術が低下したと言われることがある。しかし、技術力自体に大きな問題があるというのではなく、存在する技術を製品や顧客への提供価値へと繋げる経営にこそ、大きな問題があると著者は指摘する。

『イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン、翔泳社、2001年)

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