競馬ファン、特に80年代から90年代にかけて競馬をたのしんで来た方にぜひ勧めたい一冊である。人ではなく競走馬を優先し、その上でジョッキーとして結果を出し続けたプロフェッショナルの言葉には軽重すべき至言が溢れている。
がむしゃらさが必要な時期もあれば、そうではない時期もある。そして、どんなときでも我慢することができなければ、運を引き寄せることもできないだろう。(104頁)
常に一所懸命であるのも良くないし、もちろん気軽に構えすぎるのも良くない。しかし、常に我慢することを著者は説く。どのような状況であっても、我慢することを継続できれば、結果的に自身にとっての機会を見出すことができるのであろう。
大切なのは、一歩一歩進んでいくことを大切にする気持ちだと思う。(104頁)
老子の「足るを知る」に通ずる言葉のように私には感じられる。つまり、大きな勝ちを狙ったり、無理をするということではなく、地道な一つひとつの積み重ねに意義を見出すこと。さらに、それを継続することに重きを置くことが大事なのだろう。
十割勝つことなどは不可能なのだが、負けてしまった八割のレースの「質」は絶対に無視できない。「そのレースの中で自分がやれることのすべてをやって、馬の力を出し尽くせていたのかどうか」はとにかく大きい。それは、自分の中の意識としてもそうだし、ライバル旗手にどういう印象を植え付けられたか、あるいは次の騎乗依頼を受けられるかどうかということにもつながっていくのである。(166頁)
一歩一歩を大事にしていけば、一つの勝ち負けという結果に一喜一憂するという気持ちもなくなるだろう。むしろ、一歩足を踏み出すというプロセスを充分に噛み締め、意識してその一歩を自身の糧にすること。こうすることが、翻って自分自身の結果に繋がり、かつ自身の次の一歩へと繋がって行くということではないだろうか。