2017年6月24日土曜日

【第720回】Number929「桜の挑戦。」(文藝春秋、2017年)

 前回のワールドカップでセンセーショナルな活躍を見せたラグビー日本代表。その記憶がまだ新しいために、2019年に日本で開かれる次回大会は遠い未来に開かれるものであるかのように錯覚してしまっていた。あと二年という期間は、長いようでいて、短いのかもしれない。

 ワールドカップ後に、日本代表ヘッドコーチがエディー・ジョーンズからジェイミー・ジョセフへと交替したことは記憶していた。しかし、現ヘッドコーチがどのようなタイプのコーチであり、その結果として日本代表チームがどのような状況なのかは、よくわかっていなかった。前回のワールドカップでの躍進で、日本ラグビーへの国内での注目はたしかに上がったが、サッカーや野球の日本代表と比較するとまだ報道は少ないのであろう。

 今回の特集号において、主要な代表選手に関する記事を読むことで初めて理解することが多いとともに、やはりヘッドコーチの言葉が興味深かった。

 素早さ、スキルフルであること。全般には、NZで用いる言葉なら、コーチャブルであるところ。コーチをしやすいのです。協力的で忍耐強い。これはラグビーに限らず、広く日本の文化なのだと思います。コーチの立場としては、そこに加えて、もっと選手の側から率先して動き考えることを求めたい。みずからをプロデュース、みずからをオーガナイズできれば、さらにチームは強くなります。(22頁)

 上に引用したジェイミー・ジョセフの日本代表チームに対する所感は、日本の組織全般に通用する指摘であるように思えてしまう。良い点として挙げられている「コーチャブル」という言葉に特に面白味を感じた。協力的であったり忍耐的というのはよく言われることであるが、教えられるマインドセットが教えを引き出す言動をとることができるというのである。人材育成が行われやすいマインドセットを持っていることが、日本人の優れた特徴の一つなのではないだろうか。


 反対に、ラグビーの日本代表であるプロフェッショナルを見ている彼からしても、「もっと選手の側から率先して動き考えることを求めたい」という言葉が投げかけられている点に留意したい。速い判断、自分で考えて素早く行動することに長けている人物でもそうした特徴を持っているのであれば、普通の<日本人>も同じような特徴をよりネガティヴなレベルで持っていると考えて、マネジメントに活かすべきではないだろうか。


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