2018年1月6日土曜日

【第795回】『「できません」と云うなーオムロン創業者 立石一真』(湯谷昇羊、ダイヤモンド社、2008年)

 オムロンの創業者である故立石一真氏の人生を綴った本書。京都は、起業家およびベンチャーが生まれる地として有名であり、日本電産の永守氏も立石氏の薫陶を受けた存在だという。また、ドラッカーが巻頭の案内文を書くなど、立石氏のビジネスパーソンとしての凄さや人格の素晴らしさを感じさせる。

「しがないナイフ・グラインダーの商売に比べれば、本職の技術で生み出した商売はまったくありがたい。お得意先も、まるで別世界である。昔住んでいた故郷の国、そこは友情もあれば、知性もあり、趣味もあれば、情操も満ち満ちている。木々は豊かに実り、鳥は楽しく歌っている。『青い鳥』を求めて遍歴の幾星霜、その青い鳥は、私の最も身近なところにいたのであった」(22頁)

 生活をするために事業を立ち上げようと様々な領域にチャレンジする中で、最終的には自身の拠り所である技術に至る。しかし、寄り道とも思える様々な試行錯誤を経たからこそ、自分自身が何を大事にし、何によってビジネスを継続できるかに気づいた、というようにも考えられるのではないか。

「もっと商いの大切さを知らんとなぁ、商いいうもんは相手さんがあってこそできるもんや。その相手さんが何を望んではるかわかってんのに、物理的にどうやからとか、いまの技術ではどうやとか、努力も工夫もせずに『今回はこれで勘弁してください』などと断るなんぞは、もったいなくて罰が当たるで」(144~145頁)


 顧客志向と要約してしまうと溢れ出てしまうものが、ここにはあるように思える。顧客のことを考え、ひいては社会のことを考える。「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」という社憲を制定した立石氏の想いに満ちた箇所である。月並みだが、真剣に働かないとと自ずと思う。


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