2018年1月20日土曜日

【第800回】『華麗なる一族(中)』(山崎豊子、新潮社、1980年)

 だいぶ前に放映されていたドラマの最終回、かつその決してポジティヴではない結末を知っている本作品の、中巻というのはなかなかしんどい。様々なエピソードが、悲運の終末へと至る伏線に思えてしまい、読んでいて辛くなってくる。しかし、気になるので最後まで読み進めるのではあるが。

 外目には「華麗なる一族」として由緒ある家でありながら、その中で生きる人々は必ずしも幸せそうではない。むしろ、苦しみを抱えながら、複雑な人間関係の中で悩みを自分たちで作り出しているようである。守るものがあるということは、地位やカネを持たない身からすると羨ましくも思えるが、生きづらさをも生じさせているようである。

「僕のような人間、万俵家の血をひいて背骨がいびつに歪んだような人間を、これ以上、つくりたくないからだーー」(320頁)


 万俵家の次男である銀平が、自身の妻に言うセリフには、自分自身に言い聞かせるような、もの哀しさが滲み出ている。このような発想を持たざるを得ない環境は、小説でもなければなかなか想像できない。


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