人間の暗い部分に焦点が当てられ、バッド・エンディングへと至る物語であった。しかし、悪が際立つことによって、その反対概念としての善について読者は自由にかつ深く考えさせられるのであろう。本作では、正義は徹底して報われず、ビジネス上でも社会上でも破綻を招くことになる。
しかし、盛者必衰のごとく、悪もまた、一時的な繁栄は得ても、その後には悲惨な結末を招くことになる。とりわけ、長編小説の最後の部分で、その凄みを凝縮して著者は描き出している。
人気のないがらんとしたダイニング・ルームには、曾て万俵家の華麗な一族が団欒したさざめきはなく、三人の使うナイフとフォークの音だけが、天井に音高く響いた。(539頁)
物語の冒頭でも食事のシーンを描き、最後においても食事のシーンで締めている。両者における登場人物の相違、会話の相違によって、最後の哀しい結末がくっきりと表現されている。
【第494回】『白い巨塔(一)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第495回】『白い巨塔(二)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第496回】『白い巨塔(三)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第497回】『白い巨塔(四)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第498回】『白い巨塔(五)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第495回】『白い巨塔(二)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第496回】『白い巨塔(三)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第497回】『白い巨塔(四)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
【第498回】『白い巨塔(五)』(山崎豊子、新潮社、2002年)
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