ドラッカーを読み直そうと思っていた。しかしあまり時間がなかったために本書で代用したという側面はある。とはいえ、本書は再読であり改めて読み直そうと思わせる魅力が本書にはあるとも言える。実際、読み直してみて、改めて気づかされるものが多かった。
主人公である野球部マネジャーのみなみがドラッカーの『マネジメント』を座右の書として部および部員に貢献しようとする一連の動きは興味深い。理に適っているとも思えるし、ストーリーとしても違和感がない。
安富氏が『ドラッカーと論語』で言及しているのと同感で、最後にヒロインが亡くなる展開は安っぽいドラマのようで今ひとつではあるがそれ以外は読み応えがある展開だ。それでいてドラッカーを学べるのであるからお得な一冊であることは間違いない。
「働く人たちに成果をあげさせる」ことは、マネジメントの重要な役割だった。そのためみなみは、「どうやったら部員たちに成果をあげさせられるか」ということを、ずっと考えてきた。(94頁)
企業組織における社員を部活動における部員に置き換えて考える。簡単なようでいて難しいことであり、それを愚直に繰り返すことは至難の業であろう。しかしこれをみなみはやりきり、かつ自分の親友である夕紀に援用した。
みなみは夕紀の仕事を設計していったのだ。
まず、彼女の仕事を生産的なものにしようとした。だから、マネジメントにとって最も重要な仕事の一つである「マーケティング」を、彼女に一任した。
次に、フィードバック情報を与えた。面談が終わると反省会を開き、自分の評価や感じたことを率直に伝えた。また、部員たちからも感想を聞き、それらも全て伝えるようにした。
最後に、夕紀自身が学習を欠かさないよう気を配った。彼女にも『マネジメント』を読んでもらったのはもちろん、どうやったらもっと部員たちの本心を聞き出すことができるか、話し合ったり、それ以外の本を読んでもらったりもした。また、親や病院の人たちにも相談してもらうなどして、幅広く情報を蓄えさせた。
そうやって、みなみは夕紀の仕事に責任を持たせようとしたのだ。(95~96頁)
下手なマネジメント本よりも本質を簡潔に押さえている。自分自身を省みても気づきの深まる箇所である。
【第662回】『ドラッカーと論語(2回目)』(安冨歩、東洋経済新報社、2014年)
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