2019年4月20日土曜日

【第948回】『When 完璧なタイミングを科学する』(ダニエル・ピンク、勝間和代監訳、講談社、2018年)


 著者の書籍はいつも面白い。新しい視点を我々読者に提示してくれる。提示された主張がその後数年を経て敷衍し、ビジネス界の常識となることも多い。2002年の『フリーエージェント社会の到来』では企業組織に正規社員として勤務しないフリーエージェントという働き方を提示し、2010年の『モチベーション3.0』では内発的動機づけを論じた。

 本作では、これらで論じられてきた何をなすかというWhatを扱うのではなく、いつ行うべきかというWhenがテーマである。以前の著作を包含しながら、また新たな視点を加えてくる発想は流石である。

 何かを始める時の留意点もあるし、何かを終える時にも重要なヒントはある。しかし、私が興味深く思ったのは中間におけるポイントである。

 中間地点は、人生の現実であり自然の力であるが、だからといってその影響を変えられないということはない。不振を刺激に変える最善の策としては、次の3つがある。
 1つ目は、中間地点を意識すること。気づかないままにしておいてはいけない。
 2つ目は、あきらめるきっかけではなく、目を覚ます機会としてそれを用いること。「ああ、しまった」とあきらめるのでなく、「おっと大変だ」と意をもむ機会として使うことだ。
 3つ目は、中間地点で、ほんの少しだけ自分がリードされている、または後れを取っていると考えてみることだ。これによって、モチベーションが活性化される。もしかすると、全国大会で優勝できるかもしれない。(168頁)

 中だるみという言葉があるように、中間地点ではともするとやる気が減衰したりミスが多くなるものであると考えがちだ。しかし、中間地点をポジティヴにするかネガティヴにしてしまうかは個人の工夫次第のようだ。

 まず、特定の地点を自分で設定することが重要ということは納得だ。いわば、自分で途中段階で締め切りを設けることで、その仮説的な締め切りに向けてやる気を高めることができる。

 そうして設定した中間の締め切りの時点を意識することで、建設的に焦りを生み出すことができる。冷静にその時点での達成度合いを把握することで、本当の締め切りに向けた計画に意識を向けるのである。

 そうすることで、少し自分が当初設定していた理想的な自分自身に負けているという感覚を持つことでより自分を高めようとやる気になると考えてみても面白いだろう。

【第818回】『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク、大前研一訳、講談社、2010年)

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