2019年4月6日土曜日

【第944回】『陋巷に在り 10 命の巻』(酒見賢一、新潮社、2003年)


 顔氏の太長老が、自身の娘であり孔子の母親である顔徴在について、妤に対して語り聞かせる。孔子の謎に包まれた誕生における大胆か仮説の提示に魅了されながら一気に読み進められる。以下の引用は、その間に挟まれた顔回と医とのやりとりから。

 秘鍵は問われるものではなく、自ら摑むべきものである。他者の秘匿を考え無しに問うのは非礼である。(324頁)

 一見すると礼に基づいて顔回が医に医術を尋ねただけなのであるが、医はそれに対して怒りを表す。徒に他者に対して尋ねるのではなく、自分で考えて自分で行動してみて会得する。そうした過程を経た上で尋ねるということが礼なのであろうか。

【第934回】『陋巷に在り 1 儒の巻』(酒見賢一、新潮社、1996年)
【第935回】『陋巷に在り 2 呪の巻』(酒見賢一、新潮社、1997年)
【第936回】『陋巷に在り 3 媚の巻』(酒見賢一、新潮社、1998年)

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