大作がついに大団円を迎える。尼丘での一件が終わり、魯における孔子の政争へと舞台は移る。やや静かな展開の中であればこそ、孔子や顔回の意志が色濃く現れているように思える。クライマックスに近づき、孔子は魯を出る決意を固める。その孔子に従って魯を出ることを、顔回は即決する。
「潰えたものをただ見守るだけでは将来はありません。わたくし回は先生に学ぶ者です。どうして陋巷に残り、一人楽しむことが出来ましょう」(588頁)
孔子にとって最愛の弟子と言われる顔回は、ひたすらに孔子を尊敬する存在であった。師弟関係の理想として、微笑ましいとともに羨ましくも感じる。
【第934回】『陋巷に在り 1 儒の巻』(酒見賢一、新潮社、1996年)
【第935回】『陋巷に在り 2 呪の巻』(酒見賢一、新潮社、1997年)
【第936回】『陋巷に在り 3 媚の巻』(酒見賢一、新潮社、1998年)
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