2015年10月11日日曜日

【第499回】『不動心』(松井秀喜、新潮社、2007年)

 僕は、生きる力とは、成功を続ける力ではなく、失敗や困難を乗り越える力だと考えます。(8頁)

 順境の中でパフォーマンスを発揮することに比べて、逆境の中でいかに結果を出すことの方が難しい。しかし、私たちの日常においては、順境とともに逆境もまた訪れるものである。これは誰にも訪れるものであるのだから、生きていく上でも、またプロフェッショナルとして他者に貢献するためにも、逆境をいかに生きるかが大事なのである。

<日本海のような広く深い心と
 白山のような強く動じない心
 僕の原点はここにあります>(10頁)

 松井秀喜ベースボールミュージアムに寄せた著者の言葉だそうだ。「広く深い心」と「強く動じない心」とから「不動心」が構成されると著者はする。ここに、著者の考え方が凝縮されているようだ。

 これまで星稜高校、巨人、そしてヤンキースでプレーしてきましたが、たとえ自分が活躍して試合に勝ったときも、自分の力で勝った、と思ったことはありません。本当に、そんなふうには考えないのです。ですから、この記者がいうように、自分の力でチームを強くしたい、などとは思いません。
 チームの勝利のために自分がすべきことを考えて打席に入ることが、結果として、自分の成績にもプラスに作用している。これがすべてです。(152頁)

 「強いチームばかりでプレイしてきたが、弱いチームでプレイしてチームを強くしてみたいか」という記者に対する上記の回答が秀逸だ。チームプレイに徹することで、自分のパフォーマンスの向上にも繋げる。チームの結果にもコミットして、自分の結果にもコミットする、ということには、当事者としての強い覚悟が伴う。企業で働くプロフェッショナルにも考えさせられる至言である。


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