2017年7月30日日曜日

【第732回】『”ありのまま”の自分に気づく』(小池龍之介、KADOKAWA、2014年)

 基本的には難しい書籍を好んで読む変わり者であるが、すっと理解できて、何となく共感ができる書籍も読みたくなる時がある。特に、前提知識を特に持っていない領域においては、その傾向が強くなる。

 本書は、内容を理解することは難解でないのだが、自分に置き換えて噛み締めながら読み進めると、心にしみてくるものがある。こういう読書体験も心地よい。

 自分自身の真の(弱い)姿を極力見ないで済むようにと、私たちは背伸びして綺麗な自分の姿(それは幻覚!)を、鏡に映して惚れ惚れとしたがっているのです。
 しかしながら、背伸びすることには必ず代償がついてくるものでありまして、無理な背伸びのせいで肩には力が入りっぱなしになり、いつも緊張していて、ホッとひと息つく、安息の時が得られなくなるのです。そして、何よりも重要なことには、いつまでも自分に対し、「もっと良くなりなさい」「ちゃんとしなさい」と命じ続けるせいで、自分が根っこのところで自分の弱い部分を承認できないままになってしまうのです。(4頁)

 書かれていることは至極ごもっともである。しかし、私たちはどうしても背伸びをしてしまいたくなる。目標を持たなければならないという外的プレッシャーもある。少しでも自分を良く見せたいという邪な発想も時に出てくる。自分自身の価値を見出したいがために、他者と比較して秀でている部分を見出して落ち着きたくなる。

 こうした一連の背伸びが私たち自身を苦しめる。深呼吸をしてふと自分の身体に意識を向けてみる。すると、肩が凝っていたり、腰が痛かったり、目が疲れていたりする。背伸びの代償が身体に現れたものであり、精神面に与えたダメージの蓄積もあるだろう。


 自己効力感ではなく自己肯定感を、というメッセージは『「働く居場所」の作り方』をはじめとした昨今のキャリア論で言われることである。これもまた、背伸びを自重し、弱い部分も含めた自分自身を丸めて認めようという本書の考え方のビジネス場面での適用と考えられるだろう。

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