ユング心理学の大家である著者が、ユング心理学と仏教との関係性について述べている本作。ユングを学ぶ上でも面白いし、仏教を学ぶという意味でも大変興味深い一冊である。まず、仏教におけるいわゆるお経の持つ意味合いについての著者の考察に納得させられた。
彼らは「読む」のではなく「唱える」のです。つまり、この経を唱え、似たような有難い名を繰り返しているうちに、意識変容が生じるのが期待されているのです。そのような意識によって華厳経に接してこそ、その内容が理解されるのではないでしょうか。(56頁)
仏教に対して素人である私が経を学ぼうとすると、どこか冗長で、また繰り返しが多いように思えてしまいなかなか入ってこない。しかし、それは経を頭で読もうとしているからであり、音読することで中身が身体に入ってくると著者はしている。まだ試していないが、納得的な解説であり目から鱗が落ちる想いである。
ユング心理学はきわめて深く広いものですが、それを受けとめる際に、西洋人が自我との関連において理解しようとするのに対して、日本人(あるいは東洋人)は、自他分離以前の存在との関連において理解しようとする、と私は感じています。(128頁)
自我とは何か。西洋と東洋とでその捉え方は異なるものであり、だからこそカウンセラーが他者と接する際に、自我の捉え方の彼我での差異を考える必要があるのだろう。
【第957回】『ユング心理学入門』(河合隼雄、河合俊雄編、岩波書店、2009年)
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