2019年6月8日土曜日

【第959回】『フロイト』(小此木啓吾、講談社、1989年)


 意識の背景には前意識がある。前意識は、そこに意識をフォーカスすれば思い出せるものであるが、その下にある無意識は自分自身で思い出すことはできないという。だからこそ、カウンセラーが求められ、カウンセラーによる支援によって自分自身の無意識に目を向けることができる。

 無意識を意識化しようとする、精神分析療法の目的は、多くの場合、患者がおこす「抵抗」によって阻まれる。つまり、なんらかの感情や欲求が抑圧されて、無意識化されるのは、それを意識することに、激しい不快、苦痛、不安、そして罪悪感が生じるためである。したがって、”無意識化されたもの”を、”意識化”するさいには、それらの不快、苦痛、不安、罪悪感が激しく再現される。これらの感情=抑圧のために、無意識を意識化しようとする治療は妨げられてしまうが、このような現象を、フロイトは「抵抗」とよんだ。(34~35頁)

 しかし、無意識に目を向けることには「抵抗」が邪魔をすると指摘されている。反対に言えば、私たちは意識したくないものを無意識化しているわけであり、それを思い起こすことを避けるために「抵抗」が生じる、ということであろう。

【第954回】『フロイト思想のキーワード』(小此木啓吾、講談社、2002年)
【第953回】『フロイトとユング』(小此木啓吾・河合隼雄、講談社、2013年)

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