アートは難しいし、現代アートとなるともはや意味不明、という方も多いのではないか。私もそうである。しかし、本書を読むと、鑑賞のしかたにはいくつもあることがわかるし、何より楽しくなる。そんな入門書である。
現代アートは、その方法と素材の多様さゆえに、面白い現象を引き起こします。普通であればつながることのないAさんとBさんの専門領域を、アートはいつの間にかつないでしまう。アートは、人と人、領域と領域の隙間を埋めていくための、有効な一つの装置です。要するに「隙間装置」「関係装置」の性質をもっていると考えてください。(24頁)
アートとは、唯一無二の作品であると私たちは考えるし、だからこそ他との関係性というものがないように誤解しがちである。しかし、アート作品は、人と人、事象と事象とを結びつける媒介物であるという。新しい視座を私たちに提供し、それによって、私たちが日常的に見落としがちなものに焦点を当てることができるということであろう。
線描において、西洋人が最終的に描かれた「形」を鑑賞するのに対して、私たち東洋人は、「過程ー時間」を見るのです。(44頁)
鑑賞の対象に関して、西洋と東洋における違いが端的に指摘されている。西洋人が結果を見て、東洋人がプロセスを見るということは、結果重視とプロセス重視との違いが表れているようだ。
世界はそこかしこでつながっていますが、みんなが一斉に同じ方向を向いているわけではありません。人間には絶えずいまの人間関係、自分の情報環境を更新していこうとする強い能力があります。それが多くの人に共有される場合、特定の人との間だけの場合などさまざまなケースがありますが、いずれにおいてもアートは、他者との関係をつくり続ける媒介となるのです。(176頁)
だからといって、違う文明の間において文脈や価値観を共有できないということではない。多様な価値観を背景にして、多様な方向を向いていながらも、創り出されるアート作品によって、私たちは多様な人間関係を多様な方法で創り出すことができる。アートを鑑賞して得られるワクワク感は、この可能性にこそあるのではないだろうか。
【第161回】『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』(長谷川祐子、集英社、2013年)
【第562回】『名画は語る』(千住博、キノブックス、2015年)
【第6回】『現代アート、超入門!』(藤田令伊著、集英社、2009年)
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