2018年2月11日日曜日

【第807回】『コインロッカー・ベイビーズ(下)』(村上龍、講談社、1984年)

 裏扉の謳い文句には「現代文学の記念碑的作品の鮮烈な終章」と書かれている。しかし、とにかく暗く、読んでいて暗鬱とする。救いがない。どの人物にフォーカスを当てても、気が滅入ってくる。

 それでも、続きを読みたくなるのである。読まずに本を閉じてしまえばいいのだが、一気に読まさせられる何かがある。これが「現代文学の記念碑的作品の鮮烈な終章」ということなのか、中毒性はあるのだろう。

 死に抗うのを止めると体から苦しさが消えること、心臓の鼓動が聞こえる間は諦めずに苦しさと戦い続けなければいけないこと、の二つだ。(185頁)

 死と紙一重の体験をした主人公の一人が気付かされた二つのこと。この部分は物語の最終章であり、素直に感銘を受けた。物語は明るい終わり方をするのではないかと一瞬思った。しかし、最初にも述べた通り、そのようなことはなく、むしろさらに悲惨を極める終わり方となる。


 予定調和では終わらない。これが「現代文学」というものなのだろうか。


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