総会屋、不良債権処理、バブル崩壊、社内政治といった暗鬱としたテーマが散りばめられている。こうした職務内容や職場環境で働きたいとは全く思えないし、読んでいて爽快感はあまりない。しかし、暗い中にも、暗い中だからこそ、言葉に感銘を受けることがある。
「竹中に出入り禁止を申し渡したのは大人気なかったと反省してるよ。おまえは立派だ。こうして家にまで押しかけてくるのも銀行のためを思えばこそだろう。わしも今夜竹中の顔を見て悪い気はしておらん。たとえ協銀とどうなれ、竹中とは友達づきあいをしたいと思ってたが、わしが電話をかけるわけにもいかんので、カミさんに電話をかけさせようか考えながら帰ってきたら、おまえがおったので、正直うれしかったよ」(97~98頁)
政財界のフィクサーから主人公への言葉に感動してしまった。フィクサーという存在には肯定的な感情を持てないし、企業組織にとって問題を生じさせようとも、重要なものではないと思っている。しかし、それでも人と人との真剣な交歓から生じる関係性というものはあるのだろう。
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