関ヶ原の後に、徳川幕府を開き、さらには家康から秀忠への将軍の交替を経て、家康個人から徳川家という組織による権力掌握へと盤石の組織構築が為される。それに対して、有効な手を打つことができず、いたずらに停滞の一途を辿る豊臣家。豊臣恩顧の大名が何とか事態の打開を図ろうとするも、効果を得ることが難しい中で時代が進んでいく。個人の力を組織の力に変えることの難しさを考えさせられる第九巻のポイントは、以下の部分に端的に現れている。
一時は繁栄をほしいままにした一団体、一組織の衰弱が此処に在る。
本能的に、おのれの衰弱をさとっているがため、行動ができぬ。
なにをしようとしても、不安がつきまとう。
だれもが責任を逃れようとし、今日いちにちの無事に、辛うじてすがりついているのみとなるのだ。(21頁)
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