2016年5月5日木曜日

【第572回】『アイデアのつくり方』(ジェームズ・W・ヤング、今井茂雄訳、TBSブリタニカ、1988年)

 著名な広告制作者が明らかにする「アイデアのつくり方」と聞くと、斬新な発想や方法論が詳らかにされているのではないかと私たちの多くは考える。しかしそうした期待はいい意味で裏切られ、自明に思えることの蓄積が大事であることを改めて理解することになる。

 アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもないということである。(28頁)

 全く新しい何かはゼロから生み出されるということは幻想に過ぎない。新しいものは、既存の要素の組み合わせで生み出されるのである。では、どうすれば組み合わせによって新しい価値を生み出すことができるのか。言葉を恐れずに言えば、非常につまらない、しかし真実と呼べる内容が以下で語られる。

 既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きいということである。(28頁)

 つまらないとも言えるが、勇気付けられる言葉とも言える。なぜなら、天賦の才能が求められるのではなく、事物と事物の関連性を見出すという努力で後天的に身につけられる才能だからである。

0 件のコメント:

コメントを投稿