自分自身のキャリアをどうするか、思いあぐねていた私を、人事の領域、もっと言えばビジネスの領域へ誘ったのは著者の授業であった。論理整合性のあるモデルの提示と示唆に富んだ事例の数々。コンサルティングとは面白いビジネス領域だと思ったし、学部を出た後の最初のキャリアに選んだのは良かったと思う。その後、大学の研究者や事業会社における人事といったキャリアチェンジを行った際の意思決定の要素には、本書でのポイントがあったのだなぁと本書を再読して思い返させられた。
本書のタイトルとなっているキャリアショックについて著者は以下のように端的に述べている。
「キャリアショック」とは、自分が描いてきたキャリアの将来像が、予期しない環境変化や状況変化により、短期間のうちに崩壊してしまうことをいい、変化の激しい時代に生きるビジネスパーソンの誰もがそのリスクを背負っている、きわめて今日的なキャリアの危機的状況をいう。まさに、キャリアのクライシスといってもいい。(2頁)
この定義だけを目にすると、私たちが直面する時代の厳しさばかりを意識してしまうかもしれない。しかし、ショック療法という言葉があるように、ショックとは、それを基にしていかようにも変化を自らに課せられるものであり、価値中立的な言葉である。ショックをいかに自分のキャリアの糧にできるかについて、インタビュー調査の結果から四つのキャリアコンピタンシー(117頁)として以下の四つを導き出している。
行動パターン(1)仕事を膨らませる
行動パターン(2)布石を打つ
仕事パターン(3)キャリアを進める
仕事パターン(4)キャリアを振る
いずれの行動パターンをとっても、行動の起点は自分にあり、その上で行う先として職務や社内外の顧客を意識していることに着目すべきだろう。特定の他者を相手にしながら、自分自身のたのしさを職務としてかたちにしていく。このように捉えれば、キャリアをデザインしていくということは、自分にとって興味深く面白いことに思えて来ないだろうか。
【第172回】『「働く居場所」の作り方』(花田光世、日本経済新聞出版社、2013年)
【第209回】労働政策研究・研修機構「特集 人材育成とキャリア開発」『日本労働研究雑誌』Oct. 2013 No. 639
【第563回】『キャリア・ドメイン【2回目】』(平野光俊、千倉書房、1999年)
【第252回】『組織内専門人材のキャリアと学習ー組織を越境する新しい人材像ー』(石山恒貴、日本生産性本部、2013年)
【第441回】改めて、キャリアについて考える。
【第209回】労働政策研究・研修機構「特集 人材育成とキャリア開発」『日本労働研究雑誌』Oct. 2013 No. 639
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