正直に言えば、ハウツー本というものをこれまで軽視してきた。表面的なスキルやテクニックを身につけたところで、それは一過性のものに過ぎず、環境変化によって陳腐化してしまう。それよりも、もっと歯ごたえのあるものを読み進めようと格闘したり、美しい日本語や物語を読むことで心を涵養したい。こうした気持ちは今でも基本的には変わらない。
しかし、である。ハウツー本の効用というものもあるのではないか。そうした類の書籍を敬遠しようとする気持ちに、自分自身の小さなプライドが見え隠れしているのであれば、読むべきなのではないか、と今回のケースでは思い至ったのである。
これまで見よう見まねでExcelには接してきた。最初に焦ったのは大学院に入る少し前の時分だ。白状すれば、2007年当時でvlookupを使いこなせなかったのであるが、私の研究領域の場合、質問紙調査の基礎的な分析としてvlookupが当たり前のスキルとして求められた。その苦い経験からExcelには苦手意識を持ってきたが、困った時は「Google先生」に聴くという一択でなんとかやりくりしてきた、と思っていた。
それは思っていたというよりも思い込ませてきたということだったのであろう。冷静に考えれば、何かに困った時に「Google先生」に聴くという発想では、何かを提示したいために分析を行うという正当なプロセスには至らない。プロセスにおける引き出しをいくつか持っていなければ、思考は窮屈になり、自分自身で制約をかけてしまう。だからこそ、自分自身を邪魔していた変なプライドを取り去ろうと思ったのである。
前置きが長くなったが、本書はExcelの入門書である。私のように、見よう見まねで何とか対応してきた人間にとって、ちょうど良い復習であるとともに、新しい学びを得られる素晴らしいテクストである。もちろん、全てを覚えたということは毛頭ない。今後、オフィスに置いて辞書代わりに参照していこうと思える書だ。
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