2017年4月30日日曜日

【第702回】Number926「2017年の松坂世代。」(文藝春秋、2017年)

 なんらかのデモグラフィックなデータに基づいて一括りにされるのは好きではない。平均化された人物像が、自分という人間を形容できるとは思えないし、環境に恵まれエリート街道を進んできた人間とまで一緒にされて堪るかというルサンチマンのような反発も覚えてしまう。

 しかし、松坂世代という括りだけは別格な肯定的な響きがある。人並みに野球少年であった私にとって、「松坂大輔」という巨大なアイコンには今でも魅了されるし、彼の一挙手一投足は気になる。このタイミングでなぜこの特集なのかはわからないが、目を通さずにはいられなかった。

 自分で思いついた課題をクリアすることのほうが、バッターを抑えることよりも難しいと思って、ずっとやってきました。満足したら先はないし、その場その場で満足しないというのは、自分への戒めでもあります。自分にはまだまだ成長できる伸びしろがあると思いたいし、今でもうまくなりたいと思って練習してますからね(18~20頁)


 高校、プロ野球、メジャーリーグを通じて既に一時代を築き、度重なる故障で満足に投げられなくなったここ数年。この状況で、まだ現役にこだわるのはなぜなのかと思っていた。彼は、他者との比較や、他者からの評価ではなく、自分自身で目標や課題を課し、それを達成することに喜びを感じてきたのである。だからこそ、そこに課題がある限り、苦しみかつ楽しみながら野球に真摯に取り組むのであろう。こうした姿勢が垣間見えるからこそ、今でも私たちファンを引きつける魅力があるのではないだろうか。


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