2017年12月10日日曜日

【第785回】『サピエンス全史(下)』(ユヴァル・ノア・ハラリ、柴田裕之訳、河出書房新社、2016年)

 上巻では人類自体に焦点が当てられがちだったのに対して、下巻では、近代西洋諸国がなぜ覇権を握るに至ったのかに焦点が当てられている。近代に至るまでの地域における覇権国家と異なった特徴とは何だったのか。

 ヨーロッパ人が特別なのは、探検して征服したいという、無類の飽くなき野心があったからだ。やろうと思えばできたのかもしれないが、ローマ人はけっしてインドやスカンディナヴィアを征服しようとはしなかったし、ペルシア人はマダガスカルやスペインを、中国人はインドネシアやアフリカをけっして征服しようとはしなかった。たいていの中国の支配者は近くの日本さえも自由にさせた。それは特別なことではなかった。特異なのは近代前期のヨーロッパ人が熱に浮かされ、異質な文化があふれている遠方のまったく未知の土地へ公開し、その海岸へ一歩足を踏み下ろすが早いか、「これらの土地はすべて我々の王のものだ」と宣言したいという意欲に駆られたことだったのだ。(157~158頁)

 飽くなき野心が挙げられている。こうした野心の背景には、上巻であげられた第三の革命である科学革命による技術の裏付けが挙げられるのであろう。科学技術を進展させた西欧近代の人々は、見たかったからではなく、見えてしまったが故に、野心を持ったという側面もあるのではないだろうか。

 一方のスペイン人は、世界は見知らぬ人々の国だらけであることがわかっていたし、よその土地に侵入してまったく未知の状況に対処することにかけては誰よりも経験豊かだった。近代ヨーロッパの征服者にとっては、同時代のヨーロッパの科学者にとってと同様、未知の世界に飛び込むのは胸躍ることだったのだ。(112頁)


 科学革命によって新しい世界を見ることができ、それによって新たな世界へのチャレンジ精神が培われた。チャレンジを続ければ、未知の世界への対応という点で経験値が他の人々よりも格段と上がったのである。


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