2019年8月4日日曜日

【第974回】『ラ・ロシュフコー箴言集』(二宮フサ訳、岩波書店、1989年)


 ラ・ロシュフコーとは、一七世紀のフランスの貴族であり、幾多の戦争を経験した人物である。その人物が、自分自身の人生を省みながら書き連ね、加筆と修正を加えたものがこの箴言集である。本書には、箴言集から除かれたものも記載されていて、なぜ削除したのか、反対になぜこれが残ったのか、とあれこれ自由に考えながら読み進めるのも一興であろう。

 物事をよく知るためには細部を知らねばならない。そして細部はほとんど無限だから、われわれの知識は常に皮相で不完全なのである。(106)

 知識の重要性と、探究しながらも常に不足している状態に対する謙虚な態度が述べられているように思える。無知の知といったところであろうか。

 狂気なしに生きる者は、自分で思うほど賢者ではない。(209)

 狂という概念には否定的な意味合いしか以前は持っていなかったが、論語における狂や吉田松陰・高杉晋作にみる狂に触れてみるとあながちネガティヴなものだけではないようにも感じていた。ラ・ロシュフコーも狂を否定的には捉えていないようだ。もう少し考えてみたい。

【第216回】『孔子伝』(白川静、中央公論新社、1991年)
【第320回】『世に棲む日日(一)』(司馬遼太郎、文藝春秋、2003年)

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