2019年8月31日土曜日

【第981回】『日本沈没(上)』(小松左京、小学館、2006年)


 Eテレ「100分de名著」の小松左京特集で興味を持った一冊。恥ずかしながら著者の書籍を初めて読んだのであるが、簡潔な文章で文体も私のフィーリングに合う。この後も何冊か読んでみたい。

 本書の結論は上記の番組でなんとなくは理解している。加えて、同番組の中でも言われていたが、題名の時点で読者は想定しながら読み進める。しかし、そこに何を見出すかは読者次第ということであり、多様な読み方を許すところが出版当時にミリオンセラーとなるほど売れに売れた理由なのではないか。

 尾をひいて、小さくかがやきつつ、直下の闇へおちていく、三つの星を見つめながら、小野寺は、その大洋の水の壁の巨大さ、その底にひそむ暗黒の怪物の巨大さ、そしてそれに対する人間の存在の小ささ、知識の小ささを感じ、体の芯から冷気がこみあげてくるような気がした。ーーこの広大な道の中を、小さな船に乗ってのぼっていくわびしさが、冷たい海水の圧力といっしょになって、ひしひしと胸をしめつけた。あとの二人も、同じ思いにとらわれているらしく、ひっそりと息をひそめ、暗がりの中に身じろぎもせず、小さな観測窓のうす青い円形に、じっと眼をすえていた。(99~100頁)

 海底の不気味な動きを潜水艦で目の当たりにすることとなった主人公たち。その後、日本列島に襲いかかる天変地異を暗示させる薄ら寒い見事な表現だ。

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