四〇歳定年制を主張していることで有名な著者。その著者の四〇歳定年制の本意はどこにあるのか。
四〇歳定年とだけ聞くと、四〇歳以降の働き手を切り捨てるような提言だと思われがちですが、決してそうではありません。むしろ逆で、四〇歳以降の人が雇用の不安におびえることなく積極的に働けるようにする雇用システムを提言したものでした。(14頁)
変化が激しい社会環境や企業において、企業に頼らず、変化を受け容れ、たのしみながら、どのように働き、どのように生きるか。著者は、将来を切り拓いてチャンスをつかむために、五つのステップを提示している。
(1)将来に備えてシミュレーションをする
重要な点は、将来を静的に捉えてそこから逆算するようなリバース・エンジニアリング型の目標設定・計画策定というアプローチではないということである。あり得るべき将来として考えられる多様な状況をシミュレーションして、たのしみながらトライしてみる、という態度である。シミュレーションして行動変容を試行錯誤することによって、変化への対応に慣れるという作用がある。
(2)状況に応じた発想力を養う
変化が激しく将来が見えないから成り行きに任せるという態度では、いざキャリアや行動を変えようとするときに準備ができておらずに動けなくなる。したがって、様々な可能性を想像することが重要であるとともに、自身の予想に固執せずにしなやかに対応することもまた重要である。そのためにも、新しいテクノロジーに興味を持ち、試しに用いてみることを著者は指摘している。
(3)目標を組み立てる
著者によれば、目標を創る際には長期的なものと短期的なものという二つを設けることが望ましいようだ。長期的なものだけでは具体的なアクションに繋がらないが、短期的なものだけではその場に応じた対応に汲々としてしまう。両者をバランスよく持ち統合させることが重要なのであろう。
(4)少しずつ、踏み出してみよう
三つのことが重要であると著者は述べる。第一に、決める癖をつけるということである。リスクを気にして他者に判断を委ねるのではなく、自分自身で決めるということを習慣にするということである。第二に、完璧を求めないという点である。ある程度の自信を持てる状態になったらまずは試してみるという姿勢が重要だ。第三に、大きく踏み出さないということに留意するべきだろう。背水の陣で何かに臨むということは美徳になりがちであるが、変化が激しい状況においてはコンティンジェンシープランを持つためにも小さなステップが重要である。
(5)引き返す
(1)~(4)は新たなチャンスをつかむためのチャレンジに関わるものであり、そのためには新しい行動を取ることになる。新たな行動を取った後には、その選択が失敗やミスであったということが分かることは多い。そうした際にはすみやかに引き返すこともまた重要な意思決定である。
こうしたステップを踏む上では、自身に求められる能力の現在地を棚卸しし、スキルを磨くことが必要であると著者はしている。スキルを磨くためには、ともすると私たちは、新しい知識や情報を得ることを考えてしまうが、自身の経験を学問によって体系付けすることが強調されている点が非常に興味深い。
『「働く居場所」の作り方』(花田光世、日本経済新聞出版社、2013年)
R. Babineaux and J. Krumboltz, “fail fast, fail often”
『キャリア・ドメイン』(平野光俊、千倉書房、1999年)
『21世紀のキャリア論』(高橋俊介、東洋経済新報社、2012年)
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