2016年9月24日土曜日

【第623回】『ビジョナリーカンパニー』(J・C・コリンズ J・I・ポラス、山岡洋一訳、日経BP出版センター、1995年)

 学生時代、企業組織に興味を持った理由にはいくつかあるが、本書を読んだこともその一つの重要なものであった。その後も何度か読み、久しぶりに読み直してみて、改めてそこに書かれているメッセージに呻らさせられた。

 重要な問題は、企業が「正しい」基本理念や「好ましい」基本理念を持っているかどうかではなく、企業が、好ましいにせよ、好ましくないにせよ、基本理念を持っており、社員の指針となり、活力を与えているかどうかである。(115頁)

 多くの日本企業において理念浸透が課題となってから約十年は経過している。そうした取り組みの中では、正しい企業理念や価値観といった観点で参加者から疑問や質問が出ることが多いようだ。しかし、「正しい」や「好ましい」といった発想ではなく、なんであれそれが実際的に働く上での指針となっているかどうか、という軸こそが重要なのであろう。多少の自己流の解釈やアレンジを許容しながら、社員が理念や価値観に親近感がわき、自分事として捉えて日常の仕事の中に活かしている、という状態をいかに創り出すか。ゼロから何かを生み出すというよりも、日常業務をデザインするという発想が私たちに求められているのであろう。

 企業が意図を持つのは、とてもよいことだ。しかし、その意図を具体的な行動に移せるかどうか、アメとムチを組み合わせた仕組みをつくれるかどうかが、ビジョナリー・カンパニーになれるか、永遠になれないままで終わるのかの分かれ道になる。(143頁)

 ではどのように日常の業務に落としこむかとなると、理念の唱和といったレベルの話では済まない。理念を活かすために、制度やガイドラインといったしくみをいかに創り込むことが重要である。さらには、そうしたしくみを華々しく導入するだけではなく、トップからいかなるレベルの社員に至るまで、日頃の地道な行動を促すものになっていることも必要だ。そのような地道な活動も含めたデザインとメンテナンスを担うのは企業におけるサポート部門の役割となるだろう。ただし、そうした役割を担うという自負とともに、自制心を持って部門の事象は部門で対応できるようにサポート役に徹することもまた求められる。

 管理職の仕事のなかでは、部下に配慮することがもっとも重要な部分だ。……人事部門はどんな理由があっても、各部門の人事上の問題を扱ってはならない。まともな管理職になるためには、人事に対する責任を受け入れ、人事の問題を自分で処理しなければならない。(358頁)

 HPの人事部門におけるポリシーについて述べた箇所である。各企業によって程度の差はあるだろうが、人時部門が全ての人事事象を担うべきではないのは間違いないし、だからといって部門に全てを委ねるということも現実的ではない。どのように部門のニーズを捉えて、どのように部門の管理者のサポートを行い、どのように経営に対してフィードバックするか。人事部門に求められる役割を今一度考えさせられる。


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