やはりイチローはすごいなぁと思わさせられる一冊。メジャーに行ってからの彼の言動が経年でわかるというのが良い。言葉の一つひとつに唸りながら、心地よく読めるインタヴュー録である。
かつて、自分に与えられた最大の才能は何だと思うか、とイチローに聞いたことがある。彼は「たとえ4打席ノーヒットでも、5打席目が回ってきて欲しいと思える気持ちかな」と言った。(43~44頁)
結果が出ない時、私たちは保守的になりがちであり、少し休みたいと思うものだ。幼少期の野球でさえも、チャンスで打席が来ないで欲しかったし、できれば打席に立ちたくないと思ったことを記憶している。失敗が目に見えているように思えて、守りに入りたくなる気持ち。こうしたマインドセットと真逆であることがイチロー自身が語る最大の強みであるというこの箇所には脱帽した。打席に立たなければヒットを打つチャンスはないし、行動することでしか修正はできない、ということではないだろうか。
「(階段なんて)上がってきてないですよ。今の僕には弱さしかありません。とくに苦しいときは、それを強く感じました。プレッシャーに打ち勝てない。負けている。もちろん、(いつか打ち勝てることを)期待はしてますけど、少なくともこの6年間はまったく克服できていない。どんどん苦しくなりますからね」(253頁)
メジャーでの六年目のシーズンを終えた直後、すなわち春先にはWBCの初代王者に輝き、200本安打を六年続けて達成した直後の言葉であるから驚きだ。常人がたどり着けない結果を出し続けるプロフェッショナルは、プレッシャーに打ち勝つ術を持っているものだと思いがちだが、そうではないとイチローは述べている。プレッシャーは存在するものであり、存在する中で結果をいかに出すか。考えさせられるテーマである。
この目にイチローのプレーや日常の何気ない仕草を焼きつけ、彼の試合後のコメントや普段の言葉を心に刻みつけようとしてきたのは、いったいなぜだったのか。それは、すべてがイチローにインタヴューをするために欠かせない、準備になるからだった。(7頁)
イチローがプロフェッショナルであるならば、その言葉を紡ぎ出す産婆のような役割であるインタビュアーである著者もプロフェッショナルだと納得した一節である。インタヴューにはそこに至る準備が必要なのだ。身につまされる想いがする箇所である。
【第449回】『イチロー・インタヴューズ』(石田雄太、文藝春秋、2010年)
【第411回】『屈辱と歓喜と真実と』(石田雄太、ぴあ、2007年)
【第197回】Number836「イチロー 不滅の4000本。」(文藝春秋、2013年)
【第411回】『屈辱と歓喜と真実と』(石田雄太、ぴあ、2007年)
【第197回】Number836「イチロー 不滅の4000本。」(文藝春秋、2013年)
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