2017年5月6日土曜日

【第706回】『How Google Works』(エリック・シュミットら、土方奈美訳、日本経済新聞出版社、2014年)

 Googleから学べるのは何もIT関連企業ではなく、普通の企業でも学べる。加えて、テクノロジーから学べるだけではなく、組織マネジメントや人事管理からも学ぶことはできる。イノベーションをすすめ、戦略を実現していく企業における、人事マネジメントは、やはり興味深いものだ。

 スマート・クリエイティブは、自分の”商売道具”を使いこなすための高度な専門知識を持っており、経験値も高い。(中略)実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプをつくる人間だ。(35頁)

 Googleにおける採用基準の高さはあまりにも有名だ。そうした彼らが採用する人材は、スマート・クリエイティブと呼ばれているそうだ。その定義が、上述した内容である。ここで面白いのは、専門知識や経験値が高いだけではなく、実行力に優れていてプロトタイプをつくる人材であると定義づけられている点である。Executionの重要性は、ベンチャー気質を失わないイノベーションカンパニーにおいても言語化されて、重視されているのである。

 スマート・クリエイティブをつなぎとめる一番の方法は、弛緩させないことだ。彼らの仕事をおもしろくする新たな方法を常にひねり出そう。(180頁)

 優秀なスマート・クリエイティブに新しい挑戦をさせるべきタイミング、あるいは本人がそうした希望を口にしたときには、グーグルはそれを叶える方法を見いだしてきた。大切な人物にとって最適な処遇を考え、組織のほうがそれに合わせればいい。(181頁)

 組織ではなく、個人を大事にする考え方が端的に提示されている。優秀な個人を組織の中にリテインし活躍し続けてもらうためには、刺激を与え続ける。そのためには、組織を動かすことも厭わない。もちろん、多くの企業でこうしたアプローチが通用するとは思えないが、こうした発想を持つことは大事なのではないか。

 ここまでの論調とはそれてしまうが、組織マネジメントにおいて意外であり面白いのが以下である。

 グーグルでは、マネジャーは最低七人の直属の部下を持つこと、とされていた(中略)。(中略)ほとんどのマネジャーの部下は七人よりずっと多かったので、これほど直属の部下が多いと、それぞれをマイクロマネジメントしている時間はないのだ。(69頁)


 マイクロマネジメントを避けるための工夫として、留意したいポイントである。管理対象の部下が多ければ、マイクロマネジメントしている余裕がなくなる。シンプルだが、至言であろう。


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