2018年7月29日日曜日

【第859回】『ブラックスワンの経営学』(井上龍彦、日経BP社、2014年)


 最近は、ビジネス書でも、単にハウツーを教えるのではなく、方法論の背景や当てはめに関する方法論について触れる書籍が増えてきているように思う。本書も、そうした書籍の一冊であり、ビジネスにおける考え方を養うことに踏み込んだビジネス書と言えそうだ。

 文字情報に概念を割り当てる作業のことをコード化といいます。ブルーマンたちの研究チームでは、2人1組で1つのインタビューについて責任をもち、それぞれの発言に概念を割り当てることにしました。この方法は、「デュアルコーディング」と呼ばれ、最初にコード化する者と次にコード化する者をあらかじめ定めて作業を行うのです。(81~82頁)

 修士論文を執筆する際の研究活動において、インタビュー内容をコーディングすることで概念化した身で申し上げるのはやや恥ずかしいが、デュアルコーディングという方法論を初めて知った。一人でコーディングする際には、M-GTAを用いて研究上の正当性はあったと思うが、どこかに恣意的な思いが介在しているようで不安な心持ちがあったものである。

 わざわざ複数の調査者によってコード化するのには理由があります。誰が概念を割り当てても安定的に同じ結果が導かれるべきなのですが、1人でコード化するとどうしても不安定になります。この研究では、この問題を回避するために2人でコード化するという方法がとられました。(82頁)

 デュアルコーディングの素晴らしさは、こうした恣意性が入る要素を極小化することができることであろう。二人でコーディングを行うことによって、客観性を担保できる度合いが格段に上がる。もちろん、工数という煩わしさはあるが、興味深い研究の方法論であると思う。

【第244回】『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(戸部良一ら、ダイヤモンド社、1984年)

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